十雪の間 〔江戸時代初期の代表的書院建築〕
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を随分若い時に読んだときには、心はヨーロッパやアメリカに向いていて、この空間の良さはわかりませんでした。今はこの薄暗い空間の中に身を置くと落ち着きます。
ほんのり灯される行灯〔あんどん〕も美しく感じます。
外がどんなに明るくても、障子や軒によって昼間でもほの暗い日本の空間は、今では隅から隅まで照らし出してしまう照明〔蛍光灯〕で随分味気ない空間になってしまいました。
京都に行くとほっとするのは、照明の使い方が昔からあまり変わっていないからかも知れませんね。
曼殊院は何回訪れても、奥深い場所で、見るものが多く何回行っても発見があります。
今回撮ることができませんでしたが、狩野永徳の「虎の間」の襖絵は重要文化財で桃山時代ものです。
小堀遠州好みの枯山水 白砂は水を表しています。
この松は樹齢約400年の五葉松で鶴の形をあらわしているようです。
紅葉や5月のつつじの季節は多くの観光客が訪れますが、
人が多く集まる季節は苦手なので、まだ見たことがないのが残念です。
中庭
石を多く使う日本の庭は落ち着いたグレーの石の色と緑の苔の色があっていて、何時見ても日本人の美意識を感じます。
釘を隠すためにこんなデザインをしてしまう日本人はやっぱりすごい。
黄昏の間
欄間も菊をデザインしたものですが、16の花弁の菊は皇室の紋章と同じですね。
今回は時間が無く、観ることが出来ませんでしたが、奥には茶室「八窓軒」があります。
お茶を習う前から茶室の空間は好きで観ていましたが、いつか必ずお茶室についても書いてみたいと思っています。
今回は一人旅でしたが、娘や主人と行く旅も好きですが、一人で行く旅もいいものです。
毎日しなければならない煩雑な忙しさの中で、一人になって自分と向き合う時間を一日の中でも作るようにしています。孤独という言葉の響きは私にとって、淋しいものではありません。
むしろ一人になることで、与えるばかりの自分の心の中が満たされていくのを感じます。
DATA 〔曼殊院門跡〕まんしゅいんもんぜき
address:京都市左京区一乗寺竹之内四十二
Tel:075−781−5010
Open:9:00〜17:00
Close:
URL:www.manshuinmonzeki.jp